第96章 【花巻貴大/コラボ企画】kiss with you
「・・落ち着いたか?」
花巻先輩の声にコクンと頷いた。
「で?何が不満だったわけ?」
花巻先輩は誰もいない空き教室に私を誘導させ、私の顔を覗きながらそう言った。
「だって花巻先輩、付き合ってから一度も手も繋いでくれないし、間接キスだって避けられるし・・。他の女の人には触れるのに・・私・・そんなに魅力ないですか?」
私がそう言うと、花巻先輩は少し黙った後に口を開いた。
「手を繋がなかったのは・・お前が初デートの時たまたま手がぶつかっただけでめっちゃ警戒してたからだろ・・」
あれ結構傷ついたんだぞ。と口を尖らせ、その後に大きく深呼吸をした。
「ひろかが告白してくれた時、遊びでいいからなんて言っただろ?
だから俺は遊んでるって思われているんだろうなって思ったら、初めての彼氏だって言うし、そんな軽率な事出来ねーなって思ったんだよ」
そう言ってまた少し口を尖らせた後、あぁ、もー!と今度は自分の頭を掻きむしり、少し黙った後にまた口を開いた。
「って言うのは建前で。ビビったんだよ。もし触れたりして拒否られたらどうしようって。お前が女の扱いに慣れてるって言うから、お前の前でカッコつけてスマートなフリしてたけど、本当は緊張でガッチガチだったっての!!」
「えっ・・花巻先輩でも緊張するんですか?」
「そりゃぁ、まぁ・・」
「だって、クラスの女の人の手は簡単に触ってたじゃないですか!」
「あいつらは女として意識してないから。誰だって好きな女の手を初めて握る時は緊張するもんだろ・・」
顔を真っ赤にして俯く花巻先輩は、いつものように余裕のある意地悪な顔とは真逆で、私の心臓はさっきよりも早く鳴りはじめた。
そして、自分の事を“好きなの女”と言ってくれた事がすごく嬉しかった。触れてくれないのは私の事が好きだから…そんなこと言われたら自惚れてしまう。
「私の方が緊張します!」
「・・?」
「緊張するけど、花巻先輩に触れて欲しいです」
私は花巻先輩の前にスッと手を出した。花巻先輩は少し驚いた顔を見せたけど、その後にそっと私の手を握ってくれた。花巻先輩の手はとても大きくて暖かかった。
「触れて欲しいとか・・。いいのか?俺は普通にえっろ~い事考える男子高校生だけど?」
花巻先輩はニっといつものように意地悪な笑顔を見せ、私をぎゅっと抱きしめてくれた。