第96章 【花巻貴大/コラボ企画】kiss with you
「あっ、ここのアイス食いたかったんだよな。寄っていかね?」
今日は休暇日。花巻先輩と寄り道をして帰ろうということになった。
花巻先輩はスマートに注文と会計を済ませて私にアイスを手渡した。
「美味しい!」
「マジ?俺それと迷ったんだよな」
「食べますか?」
私がアイスを差し出すと、花巻先輩は顔をスッと近づけ一度口を開けたが、すぐに顔をアイスから離した。
「あぁ・・、ちょっと待ってて」
花巻先輩はそう言ってさっきのお店に向かって行った。
「ん!スプーン」
花巻先輩はスプーンを持ってきて、私に差し出した。
「俺のここ、まだ口付けてねーから」
そう言ってまだ口を付けていない部分を私に向ける。
「あっ・・ありがとうございます」
私はスプーンに一口分のアイスを取って口に運んだ。
その後も楽しい時間のはずなのに、なぜか心がモヤモヤしていた。
アイスを食べ終えた後は買い物をしに、ショッピングモールへ向かった。
「あっ、わりぃ」
角を曲がるときにトンと手がぶつかり、花巻先輩はすぐにその手をポケットの中にしまった。
今日も花巻先輩は手を握ってくれなかった。むしろ私に触れるのを避けているようにまで感じた。
アイスの時だって、そのまま口をつけてくれてもよかったのに、わざわざスプーンをもらいに行っていた。
花巻先輩はどうして、私に触れてくれないのだろうか。
キスはもちろん、間接キスだってまだしたことがない。
周りからはあの花巻先輩と付き合ってるなら、もう結構進んでるんでしょ?なんて聞かれるけど、進んでるところか私たちは何もしていなかった。
私に魅力がないのだろうか。
花巻先輩はいつもキレイな先輩達と一緒にいるのを知っている。
元カノだってとても美人で有名な人だった。
ふとお店のガラスに映る自分を見る。
ガラスに映る自分の顔はとてもキレイとは言えなくて、私は大きくため息をついた。