第96章 【花巻貴大/コラボ企画】kiss with you
約束の祝日。
「お待たせ!」
待ち合わせ場所に来た花巻先輩。初めて見る私服。制服の着こなしもオシャレだけれど、私服はもっともっとオシャレだった。
「あれ?今日メイクしてんの?可愛いじゃん」
「あっ、はい。ありがとうございます」
普段はあまりメイクはしないんだけど、今日はちょっぴり背伸びをした。
「どっか行きたい所ある?」
「いえ。あの・・私、今まで男の人と付き合ったことなくて・・。だからどうしたらいいか分からないんです」
そう言って俯く私にハハと笑って、花巻先輩はスマホを開いた。
「前にイルカ好きって言ってたよな?水族館でも行く?」
「はっ、はい!!」
覚えていてくれたんだ。
花巻先輩はルックスだけではなくて、ちょっとした女の子の変化にも気づいたり、何気ない言葉を覚えててくれたり。こういう所もモテるポイントなんだろうな。私は半歩先を歩く花巻先輩を見て緩む口元を必死に隠した。
「そこ、段差あるから気を付けろよ?」
「あっ、はい」
水族館についてからもエスコートがスマートで話も面白くて、前よりももっともっと花巻先輩の事を好きになった。
「花巻先輩ってやっぱり凄いです」
「は?」
「女性の扱いに慣れていると言うか・・。やっぱりモテる人は違うなって思って・・」
「あぁ・・ほら、もうすぐイルカのショー始まるってよ」
花巻先輩はショーのスケジュール表を指差し、行こうぜ?と私を誘った。
「そろそろ帰るか」
一通り見て回った私達は水族館を出て、駅まで向かった。
「じゃっ、じゃぁ、私はここで・・」
「ん?」
「へ?」
「いや、家まで送るよ」
花巻先輩はそう言って一緒に改札を通った。
初めて花巻先輩と一緒に乗る電車。祝日の割に車内は空いていて、私たちは一番端の席に腰掛けた。
「あっ、そう言えばこれ」
花巻先輩がごそごそっと取り出したのは小さな袋。私はそれを受け取って中身を開けると、さっき水族館で見ていたイルカのストラップが入っていた。
「初デート記念?ってことで!」
ニッと笑って、気に入った?と私の顔を覗く花巻先輩。私は今世界で一番幸せなんじゃないだろうか。
「ありがとうございます!一生大事にします!」
「大げさだな。まぁ、気に入ったってことだよな?」
私は大きく頷いて、もらったストラップをカバンにつけた。