第95章 【矢巾/京谷】ほっとけない友人達
「お前は好きな奴とかいねーの?知ってんだぞ。結構告られてんだろ?」
「うぅ・・ん。今はまだ考えてないかな」
「そっか。まぁ、なんていうか。俺もさ、ひろかが一番仲のいい女友達だし他の男に取られるのもなんとなく・・悔しいって言うか・・」
指を触りながら俯き加減にそう言う矢巾を見て、私はまた涙が出そうになった。
「自分は彼女や好きな人作っといて、自分勝手だね。矢巾は!!」
「だよな~。ごめん」
数日後。
「ただいま~」
私はまっすぐ自室に戻ってベッドに倒れ込んだ。
ブーブーと振動したスマホを見れば、理香からの着信。
「うん。そっか。うん。おめでとう」
理香から矢巾と付き合うことになったと報告を受けた。
電話を切って、私は本棚に飾っていた3人の写真を手に取った。
「やっと矢巾が好きだって気がついたんだね。本当世話の焼ける二人だよ・・。本当、ほっとけない・・」
“友達として好きと男の子としての好きの違いは相手とキスする想像が出来るかどうか”
私はぎゅっと目を瞑った。
私は矢巾とキスをする想像が出来るのだろうか。
ガタン。
私は写真立てを床に落として、そのまま腰を下ろした。
目からは涙がぽろぽろこぼれ落ちて、呼吸が苦しくなった。
「・・よかった。想像出来なかった。・・本当・・よかった・・」
今まで怖くて想像しないでいた。
もし想像出来てしまったら、私のこの気持ちをどこにぶつければいいのか分からない。
緊張が解け、安心感で腰が抜けてた。
なのにどうして涙が出るのか。
安心感からくる涙なのか。
でも胸が苦しくて苦しくて、今すぐ消えてしまいたいとまで思った。