第95章 【矢巾/京谷】ほっとけない友人達
「おい、矢巾。部室棟の近くでいつもお前とつるんでる女子が立ってたぞ?」
「えっ・・!?いつもつるんでる女子・・?あっ・・・!!」
ガタンと部室から音がしたと思ったら、矢巾が慌てて着替え終わったジャージをバッグに詰めながら階段を下りてきた。
「・・ひろか?」
「何よ、その顔~。理香じゃなくてスイマセンでしたね~」
私がそう笑って舌を出すと、矢巾は口を尖らせて、別に。と拗ねた。
「聞いたんだろ?あいつから・・」
「うん」
帰り道、私たちは家の近くの公園に立ち寄った。
「好きだって言った。そしたら、すげぇ困った顔してた。俺の事そんな風に考えたことないって。ハハ・・。分かってたんだけどな、あいつが俺の事そんな風に思ってないことくらい。困らせたかったわけじゃない・・」
「そっか。でも、今までの関係がダメになる覚悟で好きって伝えたんでしょ?すごいじゃん。私なら・・怖くて出来ないや・・」
私はミルクティーを一口飲んで矢巾の顔を覗き込んだ。
「矢巾、カッコイイじゃん。全然ヘタレじゃない」
私がそう言って笑うと、矢巾も笑った。
「なんかさ、俺この場所でお前にフラれた報告するの2度目じゃね?なんかひろかにはいつもかっこ悪いとこばっか見せてんな」
矢巾はグーッと背伸びをして、ハァーと大きく息を吐いた。
「俺、中学の時お前のこと少し気になってた時期あってさ。でもあの時はまだ恋に恋してた感じで、元カノから告られて、お前も俺の事好きじゃなさそうだったし諦めた。でも今、諦めてよかったと思った」
「え?」
「お前とは今までの関係をダメに出来ない。なんていうか、彼女にするのはもったいないみたいな。彼女とは終わる日が来るかもしれねーけど、友達は一生もんだろ?俺、お前がいなければ恋も部活もうまくいかねーかも」
なーんてな。と照れ笑いする矢巾。
私は喉の奥がきゅーっと締め付けられて、涙が出てくるのを必死に押えた。
「こんな世話の焼ける奴、一生付き合わされる身にもなってよね」
私達はまた一緒に笑った。