第95章 【矢巾/京谷】ほっとけない友人達
それでも、理香の友人としては、理香が好きになった人を応援すべきだと思うし、合コンには付き合いで参加した。
理香は一人の男性といい感じになっていて、トイレに立った理香を追って私もトイレに向かった。
「理香~!いい感じじゃん!」
理香に声をかけると嬉しそうにはしゃいでいた。
私は理香の乱れた髪の毛を整え、ヘアコロンをかけてあげた。
「これでひろかみたいな素敵女子になれるよね!」
「理香は十分素敵女子だよ?私なんかより・・」
「それはない!けど、頑張る!ひろかみたいになりたいもん!」
よしっ!と気合を入れてトイレを出て行く理香を見送って私は鏡を見た。
「私・・なんて顔してるんだろう・・」
鏡に映った私の顔はとても醜かった。
翌日、理香が矢巾に合コンの結果報告をすると、当然の様に矢巾は動揺していた。
実際、理香は先輩の家にお呼ばれしていたし、矢巾が心配をするのは当然だろう。
「も、もし川崎さんに下心あったとしたっていいもん!好きだから何されたっていいもん!!」
理香はそう言って教室を飛び出して行ってしまった。
「あぁー、もうっ!!」
頭を掻きむしり、机にうつ伏せた矢巾を見て私はため息が漏れる。
「何今さら怒ってるの?セッティングしたの矢巾でしょ?」
「だって、あんな風に頼まれたら断れないだろ…」
私は丸めた矢巾の背中をポンポンを叩いた。
「俺、お前みたいな奴好きになれば良かったよ…。あいつは鈍感過ぎ」
“お前みたいな奴好きになれば良かったよ…”
矢巾の言葉が胸に突き刺さる。
私みたいな奴好きにならないくせに。
「矢巾が私を好きになったからといって、私が矢巾を好きになるとは限りませんけど?」
「お前…。そこはもっとフォローしろよ」
私はもう一度矢巾の背中に手を当てた。
「矢巾って本当バカだよね。まぁ、人のこと言えないけど・・」
矢巾の体温を手のひらいっぱいに感じ、ゆっくりと手を離した。