第95章 【矢巾/京谷】ほっとけない友人達
そして、私にはもう一人ほっとけない友人が出来た。
「あっ、これ可愛いー!」
急に理香が私の腕に付けていたブレスレットを見てそう言った。
「あぁ、これ駅前通りから一本外れた小道にあるアクセサリーショップで買ったんだ!私のお気に入りのお店なの」
「へぇ・・いいなぁ・・」
華奢なブレスレットの留め具の部分には太陽と月のモチーフが付いていて、手首を揺らせば、太陽と月がゆらゆらと揺れる。
その日、あまりにも理香が恨めしそうに見ていたから、ピアノのレッスンの帰りに同じものを買って翌日プレゼントをした。
「いいの!?本当に?私とお揃いでいいの?」
「いいに決まってるじゃん!」
理香は私の想像以上に喜んでくれて、プレゼントした私もすごく嬉しくなった。
理香もブレスレットを付けて一緒に手首を揺らした。
「太陽と月か・・。私とひろかみたい。ひろかが太陽で私が月。これを付けてたら私もひろかみたいに太陽みたいな女の子になれるかな?」
理香はいつもそう言っていた。
いつも私みたいになりたいと。
そこまで褒め称えられる程の人間ではないが、そう言ってもらえることは嬉しかった。
彼女の言葉に嘘はないと分かっていたから。
「ひろかみたいになりてーなら、まずはその人見知り直さなきゃじゃね?」
私達に元にやってきたのは矢巾。
人見知りな理香が唯一心を許して話せるようになった男子が矢巾だった。
「うっさいなー!私だって努力してるんだから!」
こうやって矢巾と理香がやり合っているのを見るのが楽しかった。
3人でいつもバカな話をして、テスト前には一緒に勉強したり、授業中に手紙回しが見つかって怒られたり。何をしてても楽しかった。
大好きな友人二人に囲まれて毎日が楽しかった。