第95章 【矢巾/京谷】ほっとけない友人達
「えっ・・別れた?なんで?」
矢巾から中学から付き合っていた彼女と別れたことを告げられた。
矢巾はずっと下を向いたまま話を続ける。
「練習試合を見に来たんだよ。まだベンチ入りもしてないから断ろうと思ったんだけど、なんか・・言えなくてさ。そしたら・・がっかりしたって」
私はフラれた理由が理解出来なかった。
「なんで?なんでがっかりなの!?うちは名門の青城だよ?1年からレギュラーに入る人なんてなかなかいない!!」
私は少し声を大きくして訴えたが、矢巾はハハと笑った。
「俺の一つ上の先輩で、すごい人がいるんだ。同じセッターなんだけど、本当にうまくて。チームメイトからの信頼も厚いし、すごい努力家なんだ。なのに背も高くて顔だってカッコイイ。俺なんか一生追いつけない存在で・・」
「そっ、そんなことないよ!矢巾だってじゅ・・」
「その人を!・・その先輩のことを好きになったんだって」
少しの沈黙の後にハハと矢巾は笑った。
私は只々悔しくて下唇を噛んだ。
「結局、俺を好きなんじゃなくてレギュラーで活躍する俺を好きだったんだろうな、きっと。情けないよな、本当。ハハ・・って、お前、何で泣いて・・」
矢巾が笑えば笑うほど涙が出できて、何度拭いてもダメだった。
「お前が泣くと・・俺まで泣けてくんだろ・・バカ・・・」
その後二人でしばらく泣いた。
「送ってく。なんかごめん。俺、お前にかっこ悪い所ばっか見せてんな」
「あぁ。中学の時、冬道で滑って制服のズボン破けた時とか?」
「おい!それは忘れろよ!」
アハハと二人で笑って家に帰った。
自室に戻ってスマホを開く。
[ 明日のお昼矢巾のおごりね? ]
にしし!と笑うスタンプと共に矢巾に送った。
[ 小遣い前だから手加減しろよな! ]
矢巾がお気に入りの変なスタンプと共に返事が来た。
「早く元気になれよ」
私はスマホの画面に向かってそう呟いた。