第94章 【矢巾 秀】恋に恋して
翌日、いつも通り朝練を終えて教室に戻った矢巾が佐藤に声をかけた。
「おはよー。どうだったよ、合コンの方は!・・どうせまたダメだったんだろ?」
「聞いてよ、矢巾!私恋出来るかも!!矢巾のおかげだよ~!!」
バシバシと矢巾の腕を叩きながら頬を赤らめる佐藤に、矢巾は持っていたスポーツバックを床に落とした。
「川崎さんって言うんだけど知ってる?カッコイイし、音楽の趣味も合うし、私みたいな人見知りにも優しく声かけてくれてさ!しかもね、私のこと可愛いって言ってくれたの~!どうしよう、矢巾!!」
「かっ、可愛いなんて社交辞令だろ。ってか、可愛いとか言われただけで好きになるとかバカだろ。誰にでも言ってんだよ、そう言う事は!」
興奮しながら話す佐藤を払いのけ、矢巾はバッグを拾い、自分の席に着いた。
「川崎さんは矢巾みたいにチャラくありませーん!しかもね、今度先輩の家に遊びに行くことになったの!!」
「・・はっ!?なんで!!」
ガラガラ
「こらー!席付け!HR始めるぞー」
担任が教室に入ってきて、矢巾の問いに答えることなく佐藤は自分の席へ戻って行った。
「家にノコノコ行くとかありえないだろ・・」
矢巾は佐藤をジッと睨み付けたが、佐藤の横顔はとても機嫌が良さそうにニコニコ笑っていた。