第94章 【矢巾 秀】恋に恋して
「ねぇねぇ、野球部は?野球部!」
前のめりになって矢巾の携帯を覗き込む佐藤に矢巾は少し距離を取る。
矢巾は野球部の知り合い宛に一通のメッセージを送った。
「俺の女友達が野球部と合コンしたいみたいなんだけど、人数集められる?」
数秒後、ピロンとスマホが鳴る。
随分早いな。と返信を確認して、携帯を机の上に伏せた。
「次の日曜日、4対4くらいでいいかって」
「もちろん!矢巾、本当にありがとう!!私頑張るね!」
佐藤は矢巾の両手を取ってぎゅっと握る。
目をキラキラさせて喜ぶ佐藤を見て、頑張れよ。と矢巾を言った。
早速女子メンバーを集めてくると張り切って教室を出た佐藤の背中を見ながら矢巾をため息をつくのだ。
「・・あんた、バカじゃない?」
そんな矢巾に声をかけたのは理香。
「何で好きな女の彼氏探し手伝ってんのよ」
「べっ、別に俺は佐藤の事なんて好きじゃないし」
「ふ~ん。まぁ、いいけど・・」
彼女はそう言って矢巾の机の上にポンと食べかけのポッキーを置いて去って行った。