第94章 【矢巾 秀】恋に恋して
3人は一年の頃から同じクラス。
矢巾と理香は同じ中学出身ということもあり、一緒にいることが多かった。
そんな事もあり、当初は人見知りしていた佐藤も矢巾とは気軽に話せる仲になっていた。
「ねぇ、矢巾ー。誰かいい人いなーい?イケメンで優しくて、頭良くてスポーツ出来る人!」
「いるかよ、そんなやつ!いたって彼女いるだろ、そんな好条件な奴」
矢巾は身体を起こし、佐藤の頭をゴツンと叩いた。
「そーいえば、こないだ紹介してもらったのもダメだったんだろ?」
「そうそう。ひろかったら、初めて会う約束した日にビビってドタキャンしたの!」
理香はそう言って、呆れた顔でため息をついた。
「ぶっは。お前、これで何回目だよ!」
うるさいな!と膨らます佐藤の頬を矢巾は両手で潰した。
「ブッサイクー!」
「ちょっ!触んな、バカ!」
佐藤が矢巾の手を振り払うと、再び矢巾は机のイスに腰掛けた。
「メールなら喋れるんだけどなぁ…。実際会うとなると怖くなっちゃって…」
佐藤は机に伏せて、うぅ…と唸った。
「ねぇ、矢巾?今度矢巾がセッティングしてよ!合コン!!」
「は?」
「合コンなら初めから顔合わせてるわけだし、理香が付いてきてくれたら心強いし!!」
「えっ…私も行くの?」
当たり前でしょ!と、何故か胸を張って佐藤は笑った。そして、顔の前で両手を合わせてた。
「ねぇ、矢巾!一生のお願いっ!!」
「お前の一生は何回あるんだよ!」
矢巾の声にう゛っと身体を固める佐藤であったが、それでも顔を上げずお願いをする姿勢に降参したかのように矢巾は分かったよ。と呟く。
「本当!?矢巾、ありがとう!!大好き!!」
ぴょんぴょんと跳ね上がりながら佐藤はガッツポーズをする。
初めはムスッとしていた矢巾も喜ぶひろかを見てついつい口元が緩んでしまい、自分のスマホに入っている連絡先一覧をチェックし始めた。