第93章 【国見 英】キャラメルの香りあなたの香り
佐藤先生は薬を飲み終わった俺の背後に回り肩に両手を置いた。
「やっぱり。凝りからきている頭痛よ。かなり凝ってるわね」
「いた…痛たた」
少し我慢して。と先生はマッサージを続けた。
慣れてくるとだんだん気持ちが良くなってくる。
「はい。おしまい!どう?」
マッサージが終わって肩を回すとかなり身体が軽くなった気がした。
俺の驚いた顔を見て、先生も満足気。
少し休んでいきなさい。と先生は俺をベッドへ寝かせた。
「…先生、お見合いするの?」
カーテン越しに俺は先生に問いかけた。
先生からの返答はないが、何か物音を立てていた。
シャッ
いきなりカーテンが開いて、慌てた顔の先生が顔を出す。
「やっぱり聞いてた?…これでどうか、他の人には言わないで?」
先生が差し出してきたのは、さっき先生が食べていたキャラメル。
キャラメルは別に好きでも嫌いでもない。
歯にくっつくのがいやだから、自分から好んで食べたりはしない。
「これ、すっごく美味しいのよ?」
そう言って先生は俺の口にキャラメルを一つ放り込んだ。
そのキャラメルは塩っ気があって、すごく美味しい。
そう言えばキャラメルなんて小学校以来だ。
俺は口の中でキャラメルを転がしながら目を閉じた。
その時見た夢はあんまり覚えてないけど、すごくいい夢だった気がした。