第93章 【国見 英】キャラメルの香りあなたの香り
あれは高校に入学してすぐのこと。
朝から頭痛が激しくて保健室に行った。
保健室には誰もいなくて、先生が戻ってくるまでベッドで休ませてもらうことにした。
しばらく経ち扉が開く音がして、俺はムクッとベッドから身体を起こした。ゆっくりカーテンを開けるとそこには机に座ったまま眉間にシワを寄せている佐藤先生がいた。
「教頭のバカ野郎!!いつもお見合い写真ばっか!もぅ、ほっておいて!!」
バンッと勢いよく机の引き出しを開けると先生は小さな箱を取り出した。
ガサガサと包み紙を開けて勢いよく口に運ぶ。
「うぅん!美味しい~!」
両手で頬を包んで満面の笑み。
さっきまで鬼のような顔をしていたのに…。
「よし、今日はちょっと高いコーヒーいれちゃおっ!」
今度は鼻歌まで歌っている。
なんか…面白い。
「・・・ぶっ」
俺が押え切れず吹き出すと、先生は勢いよく振り返った。
「えっ!?ごめんなさい。居たのね」
「頭痛がひどくて。薬いただけますか?」
俺はカーテンを全部開けて、椅子へと腰掛けた。
「どんな頭痛?ズキンズキンするの?それとも締め付けられる感じ?」
「…締め付けられる…感じです」
先生は、そう。と薬とぬるま湯を俺に差し出した。