第92章 【矢巾 秀】俺はピエロ
ツンツン
廊下で背中を突かれて振り返ると、あからさまにそっぽを向いて口笛を吹くマネをする彼女。
俺は彼女に仕返しをして、そっぽを向きながら口笛を吹くマネをして見せた。
何度か繰り返された後、彼女は突いた後すぐに走り去って行った。
「おい、待てっ!」
俺が呼び止めると、走りながら振り返ってべー。と舌を出して逃げて行く。
悪戯好きな彼女は俺とすれ違うたびにちょっかいをかけてきた。
それがすごく嬉しくて、廊下の向こうから彼女が歩いて来るとわざと気付かないフリをしてみせた。
夜寝る前にくる、可愛いラインのスタンプ。
特に意味はない。
その用事がないのに来る連絡がたまらなく嬉しい。
彼女のために彼女が好きそうなスタンプや笑ってくれるようなスタンプを購入した。
自分でもバカだと思うけど、そのバカも楽しかった。