第90章 【及川 徹】だから嫌いなんだよ
「岩ちゃ~ん…俺って最低かな…」
「あ゛ぁ?今さら始まったことじゃねーだろっ」
「・・・ヒドイ」
俺は部活後、部室で今日の出来事を思い返していた。
いくら苦手な子相手だからって、人に対して嫌いと言ったことなんて初めてだった。
しかも、「好きだ」と言ってくれた相手に対して、「嫌い」と返すなんてどうにかしていた。
し、か、も!女の子相手にだ。
「ほら、行くぞ」
岩ちゃんは俺のカバンを持って部室を出た。
帰り道、岩ちゃんが何かを話していたけど、全然覚えていない。
次の日、俺は彼女に合せる顔がなくて、どこか彼女を避けるように行動していた。
しかし、避けようとすればするほど、彼女と目が合う。
避けるためには彼女の行動を観察していなければならないのだから。
バッと目線を外す。今のは明らかに大げさだった。
こんなあからさまに目線を外されたりしたら、誰だって傷つく。
しかし、そーっとまた彼女の様子を見ると、びっくりするくらい友人達と笑って話をしていた。
心配して損した。