第88章 【青根 高伸】私の彼を紹介します。
次の日の放課後、私は友人が部活を終えるのを待って、ここ最近の出来事を報告した。
「えっ!?元彼が復縁求めてきた?浮気相手から本命彼女の昇格か!」
「ちょっと、言い方!!」
「でも良かったじゃん。あんなに好きだったんだから。付き合えば?」
友人は持っていたポッキーの袋を開けながら鼻歌を歌っていた。そして、何も答えない私に気が付いて、鼻歌は徐々に小さくなっていった。
「浮かない顔ですな。もしかして他に気になる人でもいるのでしょうか?」
ポッキーをマイクのようにして私の口元に持ってくるので、私はそのポッキーにかぶりついた。
「意地悪言わないでよ…」
ふふっと笑って、彼女は新しいポッキーをまた差し出した。
「何をそんなに迷っているんですか?」
「…彼とは一緒にいて楽しいし、やっぱり好きだなって思う。けど…ふとした時に考えちゃうのは青根くんのことで…」
彼女はふむふむ。と、私に向けていたポッキーを自分の口に咥えた。
私は一度大きくため息をついてから、再び自分の気持ちを吐き出す。
「けど。あの日、元彼から復縁求められた日、青根くんは何も言わずに行っちゃったんだよ?普通好きな子が元彼に復縁求められたら、何かしらアクション起こさない?メールだってあの日から来てないし…」
もう私の事なんて好きじゃないのかも。
私は、そう言いながら友人のポッキーを一つつまみ食いした。
「ひろかはさ、相手が自分の事が好きだから好きになるの?」
「へ?」
「元彼と青根くんのどっちが自分を好きでいてくれているかじゃなくて、自分がどっちを好きかなんじゃない?」
そ・れ・に!と彼女は横断歩道の白い部分だけと踏みながら最後まで渡りきると、くるっと振り返ってニカっと笑った。
「彼氏がいるのにずっとひろかを想ってくれていたんだよ?万が一、もう青根くんがひろかのこと好きじゃなくなったとしても、今度はひろかが青根くんに片想いすればいいだけの話じゃん?違う?」
ウリウリ。と私のほっぺたを突っついた後、ぎゅっとほっぺたをつねられた。
「もう、答えは出てるんでしょ?」
「・・うん」
「大丈夫!もしフラれたらまたパンケーキ食べに連れてくからさっ!」
「なんか・・今日、かっこいい」
「いつもかっこいいじゃん、私!」