第88章 【青根 高伸】私の彼を紹介します。
「ひろか~!早く来いよ!」
あれから元彼は毎日のように連絡をくれて、強引に私を街に連れ出した。
「これさ、こう!どう?どうっ!?」
「・・ぶっはっは!もう・・バカじゃない!?」
彼はいつも私を笑わせてくれる。
バカなことを言ったり、ふざけたことをしたり、一緒にいて本当に楽しい。
「なぁ、俺これ食べたい!いい?」
「うん!」
決断力があって、いつもリードしてくれる。
「で、こないだ淳がさ~」
何気ない会話の途中で手を握ってくる。
自然にさらっと握って、私をエスコートする。
「あっ・・」
先日、青根くんと通ったペットショップ。
青根くんに懐いていた子犬のゲージに売却済みの札がついていた。
それを知ったら青根くん残念がるかな。
それとも喜ぶのかな。
「ひろか!?どーした?」
「ううん。なんでもない」
私は彼に握られた手を見てふと思う。
青根くんの手って大きいのかな。ゴツゴツしてて…もしかしてバレーで突き指とかしてるのかな?
手は冷たいのかな?暖かいのかな?
「ひろか、ちょっと待ってて?」
彼はそう言ってどこかへ行ってしまった。
ふと周りを見ると、あの日青根くんと直したお花が目に入った。
踏みつぶされてクタッとなったお花たちが今はピンと上を向いている。
このお花を見たら、青根くんはきっと喜ぶよね。
私は携帯カメラを起動させてお花の写真を撮った。
「ひろか!!」
彼の声が聞こえて振り返ると、キレイな花束を差し出された。
「ひろかにプレゼント!」
「あっ、ありがとう」
私の好きなお花がたくさん詰まった花束。
キレイにラッピングされて、リボンは私の好きなピンク色。
彼は私の好きな花も色も知っている。
いつも私が欲しい言葉、物をくれる。