第88章 【青根 高伸】私の彼を紹介します。
「どうしようって、好きなら付き合えばいいし、そうじゃないなら断れば?」
「そんな簡単なことじゃないんだよ~」
青根くんからの告白を受けた次の日、友人に相談しながら私は机の上におでこを乗せた。
「青根くんはすごく良い人だよ?でも・・さ。彼氏と別れたばっかだよ?もう、あんな辛い思いしたくない」
元彼の事だって優しくて大好きだった。
この人と将来は結婚するんだ!なんて言っていた。
けど違った。
好きだった人に裏切られるのはもう経験したくない。
「今日、断ってくるよ・・」
私は放課後、伊達工に向かった。
メールなんかで断るのは失礼だと思うし、すごく自分勝手だとは思うけど、青根くんとはこれからも友達でいたい。そう思ったから。
「あれ?」
「あっ、二口・・くん?」
そうそう、俺、二口。と自分を指差して笑っている彼はもう部活の時間のはずなのにまだ制服を着ていた。
よくよく話を聞くと、今日は部活がお休みで青根くんもすでに帰ってしまったようだ。
「もしかして、告白の返事しに来たの?」
「なっ、なんで知ってるんですか?」
「へぇ。青根、告ったんだ!」
ハハハと二口くんは笑う。かまをかけられた。
「でもその顔は断りに来たって感じ?」
この人には隠し事出来ないなと、私は今の自分の気持ちを伝えた。
「なら今の気持ちを伝えればいいんじゃない?青根だって今すぐどうこうなりたいってわけじゃないと思うけど。だって、彼氏がいるの知ってて1年近くひろかちゃんに片思いしてたんだから」
「・・・えっ?何のこと?」
「アレ?知らないの?やっべぇー。青根に怒られる」
その後、二口くんから青根くんがずっと私に片想いをしてくれていたことを聞かされた。
「あいつさ、あんまりしゃべんないし、あんな外見だけど、すっげぇいい奴なんだ。だからさ、すぐに答え出さずにあいつのこともう少し知ってから答え出してやってくんないかな?」
ね?と微笑む二口くん。私は、はい。と頷いて笑った。
私はその後すぐに青根くんに連絡をして、今の気持ちを伝えた。
完ぺきに元彼を忘れられていないこと。
まだ男の人を信じるのが怖いこと。
それでも青根くんとはこれからも仲良くしたいこと。
すると青根くんは全てを受け止めて頷いてくれた。