第88章 【青根 高伸】私の彼を紹介します。
それから数日間、同じ駅の同じ時間帯にいたけど、彼が現れることはなかった。
普段使っている駅ではなかったのかな。と思い、ジャージの特徴を学校の運動部の子に伝えてどこの学校か調べてもらった。
すると、隣町の伊達工業高校のバレー部だという事が分かり、私はキレイにアイロンをかけたハンカチを持って伊達工に向かった。
校門の前に立っていると、さすが工業高校。
出てくる学生はほとんどが男の人で、ただでさえ目立つ他校の制服の上に、女な私は色んな人からの視線のシャワーを浴び続けた。
「もう帰ろうかな・・・」
私が諦めかけたその時、あの日見たジャージが遠くの方に見え、こちらへ向かっているのが分かった。きっと彼がいる。
友人に調べてもらってまでここに来たのに、実際に会えるとなるとなんだか来たことを後悔してしまう。
「そういえば、青根~!あの子とはどうなったわけ?」
「あぁ、この間のハンカチ貸した子の事ですよね?」
「そうそう。あの、前から・・ってあれ!?」
白と緑色のジャージの集団の一人が私の存在に気がついて、駆け寄ってきた。
「ねぇ、青根のハンカチの子だよね?」
「・・はい。あのハンカチを返しにきました」
私がそう言ってお辞儀をすると、とても顔の整った彼が後ろにいた同じバレー部に手を振った。
「青根~!ハンカチの君が来てるぞ!!」
彼の一声で私は一気に大男たちに囲まれた。
その中でも一段と背の高い青根くん。
周りの人たちに押され、私の目の前に立たされてしまったようだ。
私と青根くんの周りをバレー部のみなさんが囲う形になり、なんだかちょっと恥ずかしくなる。
「あっ、あの。この間はありがとうございました。その・・ハンカチを・・」
私がハンカチを差し出すと、青根くんは何も言わずにそのハンカチを受け取った。
その瞬間周りからはひゅ~と冷やかしの声がかかり、私は顔を真っ赤にしてしまった。
そっと青根くんを見上げると青根くんが私以上に顔が赤くなっていて、私はまた、ふふふと笑いがこぼれてしまった。
「私、佐藤ひろかっていいます。・・お友達になってもらえますか?」