第88章 【青根 高伸】私の彼を紹介します。
最低な人だったのに全然忘れられない。
そんな自分が情けなくて悔しくてバカみたい。
流れる涙を拭っていると、後ろから肩を叩かれた。
「・・・・・」
ふりかえると、そこには厳つい強面の男の人。
私は驚きのあまり言葉を失ってしまった。
そして、涙も止まってしまったようだ。
すごく大きな身体で、ぐっと眉間にシワを寄せている。
怖い。
そんな彼の右手が動くのを見て、私は反射的に身体をビクっとさせた。
「・・・・・」
その強面の彼の右手からスッと、キレイなハンカチが差し出された。
泣いている私に差し出してくれているんだろう。
私はそのハンカチを受け取って、ありがとう。と言うと、彼はコクンと頷いた。
「おっ、おい!青根何やって・・えっ!女の子!?泣いてる??すっ、すいません!何か失礼なことを・・!?」
彼の背後から同じジャージを着た男の人がやってきた。
私が泣いているものだから、すごく心配そうにアタフタしている。
「いえ、ハンカチお借りしただけで!」
私がそう言うと、青根くん?もコクンを頷いた。
「失礼しました!行くぞ、青根!」
迎えにきた彼が青根くんを連れて去って行くのを見て、ふふふと笑いがこぼれた。
「あっ・・ハンカチ」
それが私達の出会いだった。