第85章 【澤村 大地】あの頃の幸せ
「二次会行く人~!」
幹事が点呼を取ると女性陣は子供がいる子も多くて、一次会でほとんどの人が帰ってしまっていた。
「佐藤は大丈夫なのか?」
「私は引越して実家もないし、今日はホテルなんだ。だから一人でホテルで過ごすよりみんなと居た方が楽しいし」
「そうか。じゃぁ、俺も行こうかな」
私達は幹事が予約してくれたお店へ向かった。
仙台の冬はやっぱり寒くて、ちょっと薄着だったかなと後悔してしまう。
くしゅん、とくしゃみをすると、隣にいた澤村が自分のマフラーを私に貸してくれた。
「佐藤って昔から薄着だったよな?」
「えっ?いつの話?」
「・・・秘密」
「えぇー!なになに?そんな事あった?」
私達が騒いでいると、前を歩いていた他のメンバーが私達を冷やかす。
「おい、お前ら!イチャイチャすんなよ~。何?久しぶりの再会で禁断の愛パターン?」
「もう・・!違うってば!!・・ね?」
私が反論して澤村を見るけども、澤村は笑っているだけだった。
初恋の相手が今でも独身で、しかも当時両想いだったことが分かった今、私は澤村の事を意識してしまっているのは確かだった。
「ほら、ちゃんと結べ?」
澤村はそう言って私の首の後ろでマフラーを結んだ。抱きしめられているような感覚に陥って、私の心臓はバクバクと音を鳴らした。
こんな風に澤村の行動一つ一つに一喜一憂してしまう私は中学の時と変わってない。