第82章 【東峰 旭】厚かましいお願いですが、宜しくお願いします。
「二日間、お疲れ様でした」
ありがとうございます。と渡された封筒をぎゅっと握る旭くん。感動しているのか、少し目がウルウルとしている。
ふと、私と目が合い照れ臭そうに笑いながら、こっちへ向かってきた。
「ひろかさん…、俺…、始めて自分でお金稼ぎました…」
「うん、おめでとう」
「…はい」
まじまじと封筒を見る旭くんの顔が本当に愛おしくて、あぁ、私は彼に恋をしているんだって思った。
「ねぇ、この後暇!?ご飯でも食べに行かない?誕生日パーティーしようよ!」
私は、はい。と返事をした旭くんの手を取って街に繰り出した。
二人でファミレスでご飯を食べて、たわいもない話をずっとしていた。
ドリンクバーは何回おかわりしただろうか。
徹夜明けなのに、少しも眠くなかった。
私たちは神社に戻り、参拝をした。
眉間にしわを寄せながら、ブツブツと願い事を口にする旭くん。
私はふふ。と笑って、隣で手を合わせた。
「今年一年、旭くんにとって素敵な一年になりますように…」
私は心の中でそう言った。
参拝が終わると、一目散にお守り売り場に向かい、3つの合格祈願のお守りを手に取った。
封筒に入っていたバイト代を惜しげも無く差し出している旭くんの背中。
ぎゅっと抱きしめたい。
こんなにも誰かの幸せを願ったことがあっただろうか。
人の幸せを願う彼を私が幸せにしてあげたい。
そんな世界平和を願うような暖かい心を色で表すとどんな色なんだろう…なんて、バカな事を考えてしまった。
毎日参拝を続け、合否結果が出る日を迎えた。
「ひろかさん…俺、吐きそう…」
「旭くんが吐いてどうするのよ?」
私がそう笑うけど、旭くんは本当に顔色が悪くなっていた。今日は私もお休みだったので、旭くんとずっと一緒に過ごした。
神社の階段に座り、昨日見たテレビ番組の話なんかをして気を紛らした。それから少し経って、旭くんの携帯が鳴り、うっ…と胃を押さえるようにしながら携帯を開く。友人達からのメールを読み、バッと上げた旭くんの顔が今にも泣きそうで、あまり良い結果じゃなかったのか?と心配になった。
「みんな…合格だって…!よかったぁ…」
へにゃへにゃと身体を丸めて膝を抱えた旭くん。
なんだ、よかった。と心で思いながら、私はそっと背中をさすってあげた。