第82章 【東峰 旭】厚かましいお願いですが、宜しくお願いします。
「…旭…くん?」
次の日、またいつもの時間に旭くんが参拝に来ていた。
旭くんの就職先も少し前に決まっていたし、友達の大学合格も決まったし…。
私はそーっと旭くんの背後に近づき、声をかけた。
「今度は何をお願いしてるの?」
わぁっ!!と、予想以上に驚く旭くん。
「ねぇ、今度は何をお願いしてたの?」
「いや…それは…その…」
そう慌てる旭くんの隣に私は立った。
「じゃぁ、願い事をせーので一緒に声に出して言おうよ!」
「えっ!?それは…」
「大丈夫!同時に言ったら聞こえないよ!」
私がニコッと笑うと、少し困った顔をした後に渋々了承してくれた。
「じゃぁ、行くよ?……せー……のっ!」
「ひろかさんと付き合えますように…!!…………えっ!?」
私が何も言わずにいた事に気が付いて、旭くんは慌ててこっちを見た。見る見る顔が赤くなっていって、その場に屈んでしまった。
「ひろかさんの嘘つき…」
「ごめん、ごめん」
私はもう一度手を合わせて、目を閉じた。
「旭くんが幸せになれますように。出来れば幸せにしてあげられるのが私でありますように…」
大きな声でそう言って、屈んでいる旭くんを見た。
えっ!?と顔を上げた旭くん。私もその場に屈み込む。
「神様がすぐに願い叶えてくれるみたい」
私がそう言うと、旭くんはふにゃっと顔を崩して笑った。私はススっと旭くんの近くに寄り、ぐっと顔を近づけた。
「神様の前でそれは…」
「どうして?神様に願いが叶ったと報告しなきゃでしょ?」
確かに。そう言って笑い、私たちはゆっくりと唇を重ねた。
TheEnd