第80章 【澤村 大地】カフェオレ
次の日から、私はいつもより早く家を出た。
いつもは大地くんと一緒に登校していたけど、昨日の一件から顔を合わせられなかった。
「・・・ひろか」
朝練の時、大地くんに話しかけられたけど、私は聞こえないふりをして他の部員の元へ向かった。
「大地と喧嘩でもした?」
心配そうに声をかけてきたのは菅原さん。
「昨日、フラれました」
私がそう言うと、そっか。と少し気まずそうにした。
「もういいんです。私、他に好きな人作りますから」
私はドリンクが入った籠を思いっきり持ち上げ、体育館を後にした。
数日後、私はカレンダーを見てギョッとした。
「そうだ。今日、大地くんとお買いもの行く約束してたんだった」
私は大きくため息をついて、約束の時間よりも早く駅へ向かった。
街は休日だからかすごく混雑していて、人の多さにちょっぴり街に出たことを後悔する。
「あれ?君、烏野のマネージャーじゃない?」
声をかけられて振り返ると、そこにはいたのは青城バレー部の及川さん達だった。
「何してるの?今日は部活休み~?」
少し屈んで私の顔を覗き込んだ及川さんに、私は少し驚いて一歩後ろに下がった。
「・・・ひろかっ!!」
そんな時、大地くんの声が聞こえてきた。
私が大地くんを避けて早く街に出ると予想したのだろう。私の魂胆がバレバレなのが悔しい。
「及川さん、今日から私と付き合って下さい!」
「へっ!?」
私は駆け寄ってくる大地くんに見えるように及川さんの腕を掴んだ。
「大地くん、私及川さんと付き合うことになったから。今日も及川さんに買い物付き合ってもらうから!」
「お前、何言って・・・」
「『お兄ちゃん』には関係ないでしょ!私が誰と付き合おうと!大地くんは私の彼氏じゃないんだから!!」
私はそう言って、強引に及川さんを連れて近くのデパートに入った。