第80章 【澤村 大地】カフェオレ
ダメだ。私はそう思った。私には時間がない。だって大地くんは3年生。来年の春には卒業してしまうんだから。
友人が言っていた。
まずは意識してもらわなきゃいけないと。
「私がずっと好きなのは…」
沈黙が続き、私はギュッと目をつぶった。
「だっ・・・大地くんだよ!」
言ってしまった。
ついに言ってしまった。
でも怖くて顔を上げられなかった。
「俺も…ひろかの事好きだぞ?」
「えっ!?」
想いもしなかった答えに私は勢いよく顔を上げた。
すると大地くんが優しく笑って私の頭を撫でた。
「可愛い妹だからな。ひろかは」
後頭部を鈍器で殴られたような、そんな衝撃だった。
「本当に私はずっと大地くんのことが好きだったの!」
「そうか。そんなに慕ってくれてたのか。兄ちゃんは嬉しいよ」
泣き真似の様に涙を拭うふりをした大地くん。一世一代の告白がまさか、全く本気にされていないなんて…。悔しくて悔しくて涙が出てきた。
「私は大地くんをお兄ちゃんと思ったことなんて一度もない!ずっと一人の男の子として好きだったんだもん!!」
私がそう言うと、大地くんは目を見開いた。
「・・・えっ?」
「大地くんのバカっ!!ハゲ!!!」
私は大地くんを置いて走り去った。
悔しさと怒りで、ポロポロ涙が流れてくる。
怒ると涙が出る癖は高校生になっても治らない。