第80章 【澤村 大地】カフェオレ
「「おつかれっしたー」」
部活が終わり、私はいつものように大地くんと一緒に帰る。
毎日一緒に帰るけど、大地くんと私の手が繋がれることはない。
「道宮先輩・・・」
「ん?」
「大地くんって道宮先輩のことどう思ってるの?」
私はずっと気になっていたことを聞いた。
「どうって…。まぁ、仲のいい女友達だと思ってるぞ?中学から一緒だしな。それがどうかしたか?」
大地くんはいつも鈍感だ。
自分のことになると特に鈍感。時々道宮先輩にも同情してしまう。
「ねぇ、大地くんって今好きな人とかいるの?」
「いや、今はいない」
大地くんの答えは今の私にとっては嬉しいような悲しいような回答だった。
「今はってことは過去には好きになった人はいるんでしょ?誰?私の知ってる人?」
「…内緒」
「何で?いいじゃん、もう過去の事なんだし!!」
私が食い下がると大地くんは少し黙った後にそっぽを向きながら口を開いた。
「佐野…先生」
「えっ!?中学の時の!?」
あぁ・・と歯切れの悪い返答をする。
確かに佐野先生はきれいで大人の女性って感じだった。いつも上品な格好で、話口調とかもおっとりした先生だった。女の私から見たって惚れ惚れしてしまうほどだ。
「マセガキ~」
私はちょっぴり悔しくて、口を尖らせながらそう言った。
「ひろかはどうなんだよ…」
大地くんも口を尖らせながら、今度は私に話を振ってきた。
「私は好きな人・・いるよ?」
「はぁ?聞いてないぞ!誰だよ!?」
ものすごい憩で食いついてきた大地くん。あなたですよ…と心の中で思いながら意地悪を言った。
「中学も高校も一緒の人」
「えっ…まさか・・・」
気づかれた!?そう思って俯くと、大地くんから意外な言葉が飛んできた。
「川田か?川田なのか…!?」
川田って誰?と思うくらい、私とは全く接点のない人の名前があげられた。