第80章 【澤村 大地】カフェオレ
大地くんと私はお向かいさんで、いわゆる幼馴染。
2つ年下の私は、大地くんにとっては妹のような存在だった。
けど、私は一度もお兄ちゃんだなんて思ったことはない。
ずっと大地くんのことが好きだった。
中学でもバレー部のマネージャーをやったし、高校だって大地くんを追って烏野に進学して、またバレー部のマネージャーになった。
年の差のせいで1年しか一緒に学校生活を過ごせないから、少しでも一緒にいたかったんだ。
私の恋心に気がついているのは菅原さんだけ。
さっきの「頑張れ」もそういう意味だ。
私が他の男の子と話していると、怒ってくれるのは正直悪い気はしない。
けど100%喜ぶことは出来ない。
「おぉーい!澤村~!」
体育館の入口から声が聞こえる。
「あっ、道宮先輩!!」
私が入口にかけよると、道宮先輩が大きく手を振ってくれた。
「ひろかちゃん、久しぶり~!烏野に来たんだね!」
「はい!またよろしくお願いします。あっ、大地くんですよね?今呼んできます!」
私の声掛けに反応して、大地くんは東峰さんを解放し、道宮先輩の元へ駆け寄った。
楽しそうに話す二人を見て、私は大きくため息をつく。
私は中学の頃から道宮先輩がうらやましかった。
大地くんと同じ学年で、学校のイベントは全部大地くんと過ごせるから。
そして、幼馴染でも妹分でもない、一人の女の子として大地くんに見られているから。
私はいつ妹分から卒業できるのか。
大地くんの背中を見てそう思った。