第79章 【縁下 力】あの頃描いた未来
学校生活が始まると毎日が精一杯だった。日常会話は出来たけれど、英語での授業はやはりついていくのが大変で、毎日学校で残って勉強をした。
ルームシェアをして、寂しさを紛らわしたり、たまにパーティにも参加した。たくさんの友達が出来て、毎日が充実していた。
正月に日本に帰ろうかとも思ったけど、今保っているものが崩れてしまいそうで帰るのを止めた。
たまに見るSNS。
力は登録しているだけで何もアップされていなかったけど、成田くんや田中くん達がアップしている写真に力が映っているのを見て、元気でやっているんだな。と少し安心した。
「力、髪伸びたな。・・・彼女とか出来たのかな」
パソコンの画面に手を伸ばして力の髪を触るけど、ヒヤっと冷えた硬い感触しか感じられない。あの日、空港で感じた力の体温。もう今では思い出せない。
「力って、外見はそんなに目立たないけど、サークルとか入ったら何だかんだ言うけど面倒見いいし、結構モテちゃうんだろうな。力って、あぁ見えて・・さ・・・・」
私はハッとしてパソコンを閉じた。
その日以来、SNSも開かなかった。