第79章 【縁下 力】あの頃描いた未来
空港について手続きを済ませ、私たちは搭乗口前のベンチに座った。
「お腹空いてない?」
「ううん。力は?」
「いや、大丈夫」
「・・・そっか」
あと数十分後にはお別れなのに、力に伝えたいことたくさんあるのに、何も言葉が出てこなかった。ただ、左手に感じる力の体温だけを必死に感じ取っていた。
「頑張ってこいよ」
急に力が口を開いた。
応援してるから。そう言って微笑む力に私も精一杯微笑んだ。
アナウンスで私達のお別れの時間を知らされた。
「・・・じゃぁ、私行くね」
そう言って立ち上がると、繋がれたままの手、そして、座ったままの力。
グッと手を強く握られ、力を見ると少し震えていて俯いたまま。
「・・・ひろか、行くなよ。・・4年も離れるなんて耐えられない…」
私は胸に突っ掛っていた何かが取れた気がした。
私のことを思って一番に応援してくれた。
最後まで頑張れよって言ってくれた。
けど・・・本当は寂しいって言ってほしかったんだ。
行って欲しくないって言って欲しかったんだ。
力に・・・そう言ってもらいたかったんだ。
私は座ったまま俯いて泣いている力を抱きしめた。
「力、ありがとう。その言葉だけで私は頑張れる気がする」
鼻をすすって、大きく息を吐いた力が小さい声で言った。
「なんだよ。結局最後はひろかの方がカッコイイのかよ」
拗ねて私の腰に手を回し、お腹に顔を埋めて力は泣いてくれた。
すごく嬉しかった。
もう、それだけで充分だ。
力を私のわがままで4年も縛ってはおけない。
「力・・・今日までありがとう。……別れよう」