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【★ハイキュー!!★】短編集

第79章 【縁下 力】あの頃描いた未来



「失礼しました」

私が進路指導室から出ると、廊下では力が待っていた。

「お疲れ。帰ろうか」

「・・・うんっ!」

私達は高校2年生の冬に付き合い始めた。
少女マンガみたいな劇的な出会いとか、きっかけとかがあったわけじゃない。
なんとなく好きになって、自然な流れで付き合うことになった。

あっという間に3年になって、進路が本格的なものになってくる。
ぼやぁっと描いていた未来が明確にされていく。

私は先生からもらった書類をカバンの奥底に閉まった。



「で、ひろかはどうするの?」

「へ?」

「大学だよ…」

ちょっと呆れたように笑う力。
私は飲みかけのホットココアに口を付けた。

「まだ…考え中かな。力は?」

「あぁ…俺はS大にしようかと…」

そうなんだぁ・・・と他人事のような返事をする。

「東京の大学か…。私もそこにしようかな」

「はっ!?お前そんな適当に決めるよなよ。ちゃんと考えなさい」

力はこういう人だ。
普通彼女が同じ大学にしようかと言ったら少しは喜んでくれてもいいんじゃない?男のくせに現実主義というかなんと言うか。

「違うよ。だって、S大って英語系強いでしょ?別に力が行くからって意味ではなくて、自分が学びたいからそこもいいかなって言っただけ!」

私が少しムッとしてそう言うと、ちょっぴり困った顔で謝ってきた。

「確かに。あそこは留学制度も充実してるからな」

私は力の発言に驚いた。だって、力が希望しているのは決して英語の分野ではなかったから。

「・・はは~ん。縁下くん。君、さては私が同じ大学希望してくれないかと期待して調べてたな?」

ギクッと肩を揺らす。そんな彼を見て私は少し安心した。
力は恋愛第一の人ではないから、いつも本当に私のこと好きなのかな?なんて不安な気持ちを持っていたのは事実だ。

「いいだろ、別に。もし、ひろかがどうしてもここじゃなきゃ嫌だっていう大学がないなら提案しようと思ってただけだし…」

いつも冷静な力がちょっぴり照れてそっぽを向いた。

幸せだ。

私は力の手をぎゅっと握った。




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