第78章 【烏養 繋心】Flavor
「・・じゃぁな」
そんなに遅い時間じゃなかったので断ったけど、結局家まで送ってくれた。
「あの!…今度飲みに誘う時は事前に連絡お願いします。私も忙しいので」
「お前、こっちで飲みに行く友達いんのかよ」
東京から出てきて少ししか経ってない私はもちろん同僚以外知り合いはいない。
「いっ、いますよ!あなたになんて構ってる暇、本当は全然ないんですからね!それにお前じゃないです!ひろかっていう可愛い名前があるんです!」
本当は毎日一人でご飯を食べる寂しさに耐える日々だけど、そんなのかっこ悪くて言えなかった。
「お前こそ…。俺は繋心ってカッコイイ名前があるんだけど?」
彼はそう言って、口をへの字に曲げていた。
「けっ・・繋心・・・さん」
「おぅ」
「どういう漢字なんですか?」
私がそう言うと、彼が携帯を出した。
自然と連絡先が交換されて、自分の携帯のメモリーに入った彼の名を見た。
「繋ぐ心…。バレーボールですね」
私がそう言うと、照れた顔でじいさんがな。と由来を話してくれた。
「じゃぁ、今度こそ帰るわ」
そう言って彼は背中越しに手を振った。
「ちょっと!!私名前呼んでもらってないんですけど!!」
「・・・また今度な」
ちょっとだけ振り返ってそう言う彼に私はベーっと舌を出した。
寝る準備をして、ベッドで携帯を開く。
特に着信通知はない。
「なんだ…って、何でガッカリしてるの?」
私はバッと携帯を枕の下に隠した。
繋心さんからメールの一つでもあるかな。なんて期待していた自分に気づき、枕に顔を埋めて足をバタつかせた。
その日、あんまり眠れないまま朝をむかえた。