第78章 【烏養 繋心】Flavor
あれから数週間経って、私は休日、街に買い物に出ていた。
「・・・あれ?」
そこにいたのは、烏養さんだった。
「おぅ・・・」
私に気付いた彼はそう言って、ニヤリと笑った。
「お前、ちょっと付き合ってくんね?」
彼は今日飲む予定だった嶋田さんたちが仕事で来れなくなったらしく、一緒に飲む相手を探していたようだ。
特にこの後予定もなかったので、私は彼について行った。
「へぇ、高校でコーチを…」
合コンの時は、私はふて腐れていてほとんど話をしてなかった。
今日初めて聞くことばかりで、彼の事が少しずつ分かってきた。
「じゃぁ、高校時代はレギュラーでバリバリやってたんですか?」
「いや、俺は控えだった」
「えっ・・・?」
私がきょとんとすると、彼は少し笑って答えた。
「ベンチで悔しい思いをした分、コートの外からいつも見てきた。ヘタクソはな、ヘタクソの気持ちも、何で出来ないのかもよく分かるんだ」
そう言ってグッとお酒を飲む彼に、不覚にもちょっとドキっとしてしまった。
「カッコイイこと言ってるけど、結局ベンチなんでしょ?」
私は照れ隠しにそう言うと、うるせー!と彼は笑った。