第9章 【月島 蛍】兄貴はずるい
ギシ…ギシ…
隣の部屋からは楽しそうな話し声とベッドがきしむ音がする。
さっきまで聞こえていた話し声がぱったりしなくなった。
ギシ…ギシ…
ベッドのきしむ音だけが僕の耳に入ってくる。
嫌な予感がして、廊下に出る。
コホンと僕の咳払いに気付いたのか、
兄貴の部屋から声が聞こえてきた。
「蛍ちゃん?いるのー?」
俺はそっと兄貴の部屋のドアを開けた。
そこにはベッドの上に二人で座って参考書を読み込んでいて、
兄貴の肩とひろかの肩が触れ合っていた。
僕の部屋では絶対にベッドに座らないのに。
いつもそうだ。ひろかは兄貴にべったりで、
僕とはほんの少しの距離を置く。
「本当…理解不能…」
僕は兄貴の部屋からひろかを連れ出し、
自分の部屋へ押しやった。
ドタンっ
「けっ…蛍ちゃ…ん?」
部屋のドアにひろかの背中を押し付け、
身動きが取れないように力いっぱい抑え込んだ。
「ねぇ。バカなんじゃないの。いい年の男女がベッドの上でさ」
「だって、幼馴染のあき兄だし!そんなんじゃ…」
必死に俺から逃れようとするひろかをベッドの上へ押し倒した。
「へぇ。じゃぁ、幼馴染の僕も一緒だよね?」
「やっ、やめて。蛍ちゃ…」
横に向けるひろかの顔を正面に押し戻し、僕は強引にひろかの唇を塞いだ。
でもその後、ひろかがあまりにも泣くから
ひろかを部屋から追い出した。
「…ほんと、理解不能」