第77章 【影山 飛雄】アンダンテ カンタービレ
ひろかがお茶を用意している間、カバンの中に入っていたアレを覗いた。
ガチャ。
扉が開く音がして、俺は咄嗟にカバンのチャックを閉めた。
「ん?どうかした?」
「いや、別に・・・」
ひろかが持ってきたお茶をグビッと飲んで、俺はそっぽを向いた。
「・・・飛雄、楽しくなかった?」
ひろかはお茶を両手に持ちながら俺の方を見ていた。
「は?」
「・・・だって、さっきから眉間にシワよってるし…」
俺は咄嗟に自分の額に手を当てた。
「最近、ずっと変だよ?・・・私といるの、楽しくない?」
そう言って涙目になるひろか。
俺はふぅーと大きく息を吐いてから口を開いた。
「ひろかは・・俺に不満とかあるか?」
「不満?」
ひろかはうぅん。と考え込んで、ひらめいた顔でこっちを見た。
「バレーの事になると、私のこと忘れちゃう所!・・あっ、でもそこが好きだったりするから不満じゃないのか。・・えっと・・・・そうだな・・・」
また考え込みながら、左上を見ていた。
「あっ!あった!!飛雄といると、ドキドキしちゃう!!!・・・あっ」
そう言って顔を赤らめるひろかを見て、こっちまで顔が赤くなる。