第76章 【菅原 孝支】ウインザーノット
「えっと・・・これを、ん?えっと・・・」
何度やってもうまく出来なくて、どんどん眉間にしわが出来てきた。
「…下に来た方を一周させて・・・」
ひろかが口で俺に指示して言われた通りに手を動かす。
「・・・出来たっ!」
何度も直してやっとキレイに仕上がった。
この達成感に、さっきまでのイライラが吹っ飛んでいた。
「孝支ありがとう!なんか今日頑張れそう!!」
俺の気持ちも知らないで。俺は笑ったひろかの頬をつねった。
「ひろかが男のネクタイ結ぶのは俺と結婚して、奥さんになってからだから!!」
俺がそう言うと、びっくりした顔を見せた後に笑った。
「アハハ。孝支、もしかしてヤキモチ妬いたの?」
「・・・悪いかよ…」
拗ねた俺の頬を今度はひろかがつねた。
「今のプロポーズ?」
「・・・」
お互い目を合わせて笑った。
「ひろか先輩がイチャついてます~」
声がする方を見ると、吹奏楽部の部員達大勢に見られていた。
俺たちはバッと離れて、苦笑いをした。
「じゃっ、じゃぁ、そろそろ行くね?」
「あっ、うん。頑張れ!」
胸の前で小さく手を振ったひろかを見送って俺も部室に着替えに戻った。
「あれ。俺、もしかして…すごいこと、言っちゃった?」