第74章 【岩泉 一】私の言う事は・・・?
「いやぁ、皆さんに何罰ゲームしてもらおうかな~?」
他のメンバーと別れ、ひろかの家の最寄駅につく。
有名な巨大パフェのお店で奢ってもらおうか。とか、ひろかが今ハマっているアニメのモノマネを全力でやらせようかとか。次々とゾッとするような罰ゲームの内容を聞かされて、岩泉は気が気ではなかった。
「お前、俺には何させるつもりだよ・・・」
恐る恐る尋ねると、ひろかは足を止めた。
自分より格段に背の低いひろかが足を止めたことに気が付いたのは、二人の距離が5歩ほど離れた時だった。
「ひろか?」
「岩泉先輩・・・手」
「は?」
岩泉は俯いて話すひろかに聞こえねぇ。と聞き返した。
「手を…岩泉先輩と手を繋ぎたい…です」
いつも大勢の前でも平気で好き!と言えてしまうひろかが、顔を真っ赤にさせてお願いする姿に岩泉の心臓がドクンと大きく振動した。
「なっ、何言ってんだ」
自分の顔が熱を帯びてしまった事に気が付いて、再びひろかに背を向けてそう言った。
「岩泉先輩。私の言う事は・・・?」
先ほどのボーリングでの決まり事。
岩泉は大きくため息をついて、前を向いたまま左手をひろかがいる斜め後ろに差し出した。
次の瞬間、左手にひろかの体温を感じた。
小さくて、強く握ったら壊れてしまいそうな手。
その手を優しく握って、行くぞ。と歩き出した。