第74章 【岩泉 一】私の言う事は・・・?
最後の手段。それはボーリング。
「なぁなぁ、罰ゲーム考えようぜ?」
良くある提案にみんながのっかった。
ここだけは全員が敵。
一番いいスコアを出した者が王様になれるのだ。
一位以外の者に何でも1つ命令することが出来るというルールが決まった。
この後、ひろかと二人きりでデートしても良し。
岩泉に恥ずかしい事をさせてひろかを引かせても良し。
とにかく勝者が負けたメンバーに何でも指示出来るのだ。
「ひろか、ハンデどれくらいつける?」
「別にいいですよ~」
「さすがに女の子だし」
そう言って、松川が男女の平均スコアをスマホで調べる。
「まぁ、負けても別に遊びなんでいいですよ」
まさか自分が狙われるわけないと踏んでいる様子のひろかに男たちはにやりと笑った。
「そっか。じゃぁ、始めちゃおっか~」
及川の声で一斉に男性陣の目つきが変わった。
バコォーーン
バコッガラガラ
さすが運動部。彼らは次々とストライクを決めていく。
勢いのあるボールがピンにぶつかり、軽快な音を奏でる。
「次、ひろかちゃんね?」
ピンク色の軽いボールを指にはめて、ゆっくりとレーンに近づく。軽い助走をつけ、ボールを指から解放する。
制服のスカートが揺れて、今にも見えそうなその光景に男性陣は息を飲む。
パコォーン
と少し軽めのピンが跳ねる音に、ハッと目線をスカートから別の方へ逸らす。
「ひろか…すげぇ・・・」
ひろかが放ったボールはピンの中心を得て、見事にストライクを決めていた。
「ひろかちゃん、なんでそんなにうまいの?」
「両親がボーリング好きで、昔からやってたんです!マイボールも持ってますよ?」
まさかのダークフォース。
女子に負けるわけにはいかない。
彼らの負けず嫌いに火をつけた。