第74章 【岩泉 一】私の言う事は・・・?
「あれ?ひろかは?」
一斉に周りを見渡すが、ひろかの姿がない。
「岩泉さんもいませんね?」
国見の言葉に全員が勢いよく席を立つ。
探すぞ!誰もそんな事を言っていないのに、全員が同じ事を思っていた。
「あっ!あそこ!!」
少し奥の方にあった飴が取れるクレーンゲームの前に二人の姿を見つける。ひろかが飴の受取口に手を入れて、中を探っていた。
片手に収まる量の飴を両手で包み込み、嬉しそうに笑うひろかの姿がそこにあった。
「あれ~?もう終わったんですか?」
及川達に気が付いたひろかがこっちを見てそう言った。
「ひろかちゃん、岩ちゃん、何してんの?」
「あぁ、私格闘ゲームとか全然興味なくって…。岩泉先輩に無理言って付き合ってもらってました」
そう言って手に持っていた飴をみんなに見せた。
「岩泉先輩すごいんですよ!こんなにたくさん飴取ってくれたんです!!」
その飴の量を見て、小学生でも取れるわっ!と全員が思った。
「大した量取ってねぇーだろ…」
そう照れた岩泉にひろかは嬉しそうに飴を握りしめる。
「そんなことないです!岩泉先輩に取ってもらったってことに意味があるんです!!」
「…わかったから。早く食べろ」
「えぇー、勿体なので一生食べません!」
「お前…いいから食べろっ!!」
女子が興味のない格闘ゲームで勝った奴よりも、数個の飴を取ってあげた方が喜ぶことなど、冷静になれば分かる。今回は完全に岩泉に持って行かれた。及川達は肩を落とした。
「岩ちゃん、なかなかやるね…」
「だな。でも最後はひろかもさすがに…」
「よし、行くぞ」