第74章 【岩泉 一】私の言う事は・・・?
「でも、本当にひろかちゃん行かないのー?及川さんが奢ってあげるよん♪」
ひろかは奢りのワードにピクリと反応を示すが、振り返らずに答えた。
「今日は辞めておきます。女子会なんで!」
「女子会!?及川さんも行きたい!」
「無理です。及川先輩来たら及川先輩の話ばっかになるから絶対嫌です!!」
「えぇー?そーかなー。やっぱ俺中心になっちゃうかー。そーだよなー」
及川が嬉しそうに返すが、その後のひろかの反応は無い。
岩泉が及川を殴り、二人はまた幼馴染のじゃれ合いを始め、花巻と松川がまた始まった。と声を揃える。
よくある光景だ。
「でもさ、俺結構気になるんだけど、女子会って一体何してんの?」
花巻が不思議そうにひろかに尋ねると、ひろかはそうですね…とペンをクルっと回して答える。
「やっぱ恋バナですね!」
「恋バナねぇ~」
松川がふむふむ。と頷く。
ひろかの恋バナ…恋…恋。と金田一はいろんな妄想を始め、その様子を国見が欠伸をしながら眺めている。
「じゃぁ、及川さんの話で持ち切りだね!」
「ソーデスネー。オイカワセンパイノ、ハナシデ、モチキリデスー」
「ちょっ!棒読みっ!!」
よし、終わった。とひろかは立ち上がり、部室の扉の方へ向かう。
「みなさん、お先に失礼します!」
「おぅ、お疲れー」
「岩泉先輩っ!今日もカッコ良かったです!大好きです!失礼します!!」
パタンと扉が閉まり、部員たちは岩泉に目線を送る。
「なっ、なんだよ、お前らっ!いいから早く着替えろっ!」
岩泉はあ゛ぁ!と頭をかき、ロッカーを強めに閉めた。
やはりかっこいいや大好きなんて言われて、嬉しくないはずもない。しかし、人前であんな大胆に言えるってことはひろかの好意は恋ではないと誰かが言っていた。
本気にしないようにしていても、今の岩泉にとっては心を乱すのだった。