第71章 【菅原 孝支】男の子
「すぐ起き上がれ!もう一本!!」
部活が始まって、私達は邪魔にならないように入口付近で見学をしていた。隣にいる理香は繋心さんが声を発する度に私の二の腕をバシバシ叩いてきた。
痛い。
けど、理香の顔がとっても可愛くて、私は少し笑ってしまった。
「ナイスキー」
何度も見てきた菅原のバレー姿。
バレーのことは詳しくはないけど、菅原のプレイはいつも丁寧で常にチームのメンバーに目をやっていることは私でも分かった。
菅原らしいプレイ。
身体を逸らせて背後のスパイカーにトスを上げる仕草は特に美しくて見え、汗を袖で拭く仕草は逆に男らしい。
胸がドキドキして、菅原から目を逸らすことが出来ない。
ふと、私達の方を見た菅原と目が合う。
しかし、菅原はすぐに視線を部員に向けた。部活中だから仕方がないんだろうけど。
やっぱり避けられてるのかな。
部活が終わって、澤村が私たちの所にやってきた。
「おい、烏養さんすぐ帰っちまうぞ?行かなくていいのか?」
「えっ!?うそ、行く!私、あわよくば繋心さんと帰るから、ひろかのことよろしくね!!」
理香はそう言い残して、繋心さんの所に向かって行った。
「あぁ…悪い。俺今日予定あって。スガに頼んでおくよ」
澤村が申し訳なさそうにそう言って、自主練をしている菅原に声をかけに行こうとした。
「だっ、大丈夫!自分で言うから…」
この気まずさを自分で取らないとずっとこのままな気がする。