第70章 【菅原 孝支】今日俺は友達を失う。
「ただいま~」
自分の部屋にカバンを置くと、佐藤とお揃いのストラップに目が行った。カバンからプリクラを出す。
引き出しからはさみを出して、一枚のプリクラを切り取って、携帯のケースに貼り付けた。
「…これ、ここ切ったら、佐藤と二人だけなのにな」
仲のいいお友達二人を切り取ろうなんて考える自分はなんて嫌な奴なんだろう。ごめん、と心の中で謝って、ケースに貼ったプリクラを撫でた。
「菅原~!ちょっと、ちょっと!!」
次の日の昼休み、佐藤が俺を廊下に呼び出した。
「なに?どうかしたの?」
「いいから、ちょっと来て!!」
佐藤は俺の手首を掴んで廊下を走った。
俺の少し前を走る佐藤の長い髪がさらっと揺れる。掴まれた手首がそこだけ熱を帯びたように感じた。
「じゃーーーん!」
佐藤に連れてこられたのは屋上だった。
「理香がね、用具室の鍵もらいに行ったら、間違って屋上の鍵渡されたんだって!」
普段は施錠されていて立ち入り禁止の屋上。
初めて入る屋上に少し興奮してしまう。
「澤村~、理香!菅原連れてきたよ!」
そこにはすでに2人が居て、俺たちを手招きしていた。
「気持ちいいねぇ~」
風になびかれた髪の毛を耳にかけながら、佐藤が空を見ていた。
「なんか、青春って感じじゃない?」
「確かにな」
大地もハハと笑って、空を見た。
空よりも佐藤を見ていたいけど、俺もゆっくりと空を見た。
「私!!私、繋心さんがスキーーーー!!!」
急に大きな叫び声。
「えっ!?繋心さんってバレー部のコーチの人だよね?理香って繋心さんのこと好きだったの?」
「マジでか!お前、いつの間に!?」
佐藤と大地が声を発して、俺たちは彼女を見た。
「澤村達見に行った時に一目ぼれで…。なんか、屋上から空見たら叫びたくなっちゃった」
ハハハと照れて笑う彼女はとてもキラキラしていた。