第70章 【菅原 孝支】今日俺は友達を失う。
「次はプリクラ撮ろうよっ!」
渋る大地の手を取って、佐藤達は女子がうじゃうじゃいるエリアに足を踏み込む。
みんな一緒に見える機械だけど、佐藤達はあれがいいとかこれがいいとか厳選していた。
「菅原~、どのフレームがいい?」
「え~、うーん。これっ!これ可愛い!」
「澤村は~?」
「・・・どれも一緒だろ」
「澤村、おじさん」
「はっ!?」
「ちょっと、早く早く~」
「えっ、待って。これどこ見ればいいの?」
「あそこ、カメラあるでしょ?」
カシャ
「ぶはっ!澤村、カメラこっちだってば!」
「アハハハ!ダメだ。お腹痛いーー!」
印刷されたプリクラを見て、佐藤がお腹を抱えて笑っていた。
「どれどれ、見せて?」
「はい、これ菅原の分!」
切り分けられたプリクラには一人だけカメラの位置を分かっていない大地とか、笑い過ぎて一人フレームからはみ出てたとか、まともに4人が写っているのは1枚しかなかった。
「今日は楽しかったね!」
気づいたらすっかり日も落ちていて、俺たちは駅に向かう。
「私こっちだから!また明日ね!」
佐藤が手を振りながら改札に向かう。
送るよ。
全く逆方向の佐藤にそんなことを申し出ることが出来ない。佐藤の小さくなっていく背中を見つめながら、縮まらない距離を感じた。