第70章 【菅原 孝支】今日俺は友達を失う。
負けた大地チームがおごりのジュースを買いに行っている間、俺たちはクレーンゲームの景品を見て回った。
ふと、佐藤が居なくなっていてキョロキョロとあたりを見渡すと、一つのクレーンゲームの前でじっと景品を見つめている。
「…何?それ欲しいの?」
「あっ、うぅ~ん。ちょっと取るのは難しいかな?」
そこにあったのは良く分からないキャラクターのストラップ。どこが可愛いのか分からない。むしろ、ちょっと気持ち悪いくらいだった。
「ちょっと待ってて」
俺は財布からありったけの100円玉を取り出した。少しずつ、少しずつ前にずらしていって、最後の100円玉に想いを込めた。
ボトン
「わぁ!取れた!すごい、菅原!!」
正直ホッとした。
クレーンゲームなんてそんなに得意じゃないし。
「菅原、はいっ!」
佐藤が景品を俺に差し出した。
「えっ、いいよ。佐藤にあげる」
「2個取れたんだよ?一緒に付けよ?」
そう言うと、佐藤が俺のカバンにその景品を付けた。そして、自分のカバンにも景品を付けている。
「おそろいだね!」
笑ってその景品を揺らしながら、嬉しそうに笑う佐藤を見て、本当に景品が取れてよかったと思った。
クレーンゲーム練習しようかな。
そんなバカな事まで考えてしまう。
その後、大地達がジュースを持ってきて、ゲーセン内のベンチに座った。
「ひろか、なにそれ~!キモキャラ!」
「可愛いじゃん!菅原に取ってもらったんだ~」
いいでしょう?と見せびらかしている佐藤を見ると、口元が緩んでしまうから、ぐっとジュースの缶を口に持っていった。