第70章 【菅原 孝支】今日俺は友達を失う。
「菅原~!こっち、こっち!!」
今日は部活が休みで、俺たちは佐藤が行きたいと言っていたドーナツ屋に来ていた。
始めて見る佐藤の私服姿にドキッとする。
自分の服装は変じゃなかったか。
ショーウィンドウに映る自分の姿を確認した。
「なんか、私服で会うのってちょっと照れるね!」
佐藤はそう言って、またくしゃっと笑った。
店内はドーナツの甘い匂いで包まれていて、俺たちはたくさん種類のあるドーナツから各自注文をした。
ドーナツはどれも甘すぎずでとても美味しかった。
「菅原、それ一口ちょうだい?」
俺の食べていたドーナツを指差して佐藤がそう言った。
「いいよー」
ドーナツを一度お皿に置いて手渡そうとしたら、佐藤が口を開いて待っている。
「・・・はい」
佐藤の口にゆっくりをドーナツを近づけると、一度匂いを嗅いだ後にパクッとドーナツにかぶりついた。
「あぁ!これ美味しいね!!私のも食べる?」
そう言って、佐藤は俺の口元に自分のドーナツを持ってきた。
高校生にもなって間接キスとか、そういうのを気にしているわけではないけど、やっぱりそれが好きな相手だと少し構えちゃうわけで…。
「あれ?チョコ嫌い?」
「いや、好き!大好き!」
俺は勢いよく佐藤の食べかけのドーナツにかぶりついた。
「美味しいでしょ?」
そう言ってほほ笑む佐藤。
そして、俺が食べたドーナツを躊躇なく自分の口に運んでいる。
間接キスくらいで動揺してしまった自分がバカみたいだ。