第70章 【菅原 孝支】今日俺は友達を失う。
トンっ!
「菅原、おっはよ!」
朝練の後、教室に向かう廊下で肩を叩かれる。
彼女は同じクラスの佐藤ひろか。
「おはよ。今日機嫌いいね!何かあったの?」
「ふふふ~。秘密~」
彼女はそう言ってスキップしながら教室に入って行った。
そのすぐ後に教室に入ったら、すでに佐藤はクラスメイトに囲まれていた。
明るくて、男女隔てなく仲良く出来て、学級委員をしている彼女。行事ごとがあると誰よりも張り切って、クラスをまとめ上げる。
澄ました笑顔じゃなくて、くしゃっとキレイな顔を崩して笑う笑顔に心を奪われたのはもう1年以上も前のこと。
「じゃぁ、4人に分かれてグループワーク!」
自由にグループを作れと言われれば、当たり前のようにいつものメンバーが集まる。修学旅行の時だって、あっという間に決まった。
「菅原~、そこまとめてくれる?あと、澤村はこっち・・・」
いつものように佐藤が仕切って、俺たちは任された役割を各自こなす。連携はばっちりだ。
「ねぇねぇ、今度駅前に出来たドーナツ屋行かない?」
課題の途中に、佐藤がいきなりそんな事を言う。
「いいね!行きたーい!!」
「菅原達も行くでしょ?」
佐藤はワクワク顔で俺を誘う。
断れるわけがない。
「部活休みの日か、早く終わる日ならいいよ」
「やったね!あっ、澤村のおごりでしょ?」
「はっ!?なんでだよっ!!」
さっきまでレポートとにらめっこしていた大地が顔を上げた。
「こら、そこ!!うるさい!!」
教室の隅の方から先生の怒鳴り声。
俺たちはしゅっと身体を縮ませた。
「・・ふふ。怒られた」
「・・佐藤のせいだろ」
「澤村が大きい声出すからでしょ!」
先生に怒られたって、俺たちはこうやって無駄口を叩く。