第68章 【松川 一静】俺の彼女はドS
「ちょっと!私にもちょうだいよ!」
私は気持ちを紛らわすために、強い口調で松川にそう言った。すると松川は、はいはい。と言って私の口に今度は手でポッキーを差し出した。私が口を開きポッキーに噛り付こうとすると、スッとそのポッキーが遠くに行く。
「もうっ!!」
松川って意外と子供っぽいの?こんな悪戯今どき小学生でもしないんじゃない?私は頬を膨らませてそっぽを向いた。
「・・ふっ、可愛い」
背中に電流が走ったかのような感覚を覚える。
今確かに松川は可愛いと言った。でも私は振り返るタイミングを逃して、未だ彼に背を向けたままだ。私がこんなに動揺しているのに、松川はまたポッキーをポリポリ音を立てながら食べ始めている。
何なの?もう、わかんない!!
「佐藤?食べないの?あと1本しかないけど・・」
「たっ食べるっ!!」
あと一本という言葉に反応して、私は勢いよく振り返った。
そこにいたのは、さっきまでの意地悪な顔ではなくて、優しい顔で笑っている松川だった。
「・・・って!まだ沢山残ってるじゃん!」
「そう言わないと、こっち向かなそうだから」
松川は意地悪な顔で笑って、はい、とポッキーを差し出した。
私はまた意地悪されるんじゃないかと警戒したが、松川はもうしない、と言うので素直に口を開けてポッキーを食べた。
松川がまた優しい顔で笑うから、なんだかあやされている子供のようですごく悔しくなる。