第68章 【松川 一静】俺の彼女はドS
読めない。
相手が今何を求めているのかを読み取るのは得意だったのに、松川が今何を考えているのか全然分からない。
松川がコンビニの袋を手に出てきて、また歩き出した。
少し歩いた所にあったベンチに腰をかけたので、私は隣の開いたスペースに腰掛けた。
「食べる?」
松川はポッキーの箱を持ってそう言った。
「あっ、うん」
またお菓子?意外と甘党?と思いながら、松川がポッキーの包み紙を開けるのを見ていた。
松川の手って大きくて、ごつごつしてる。そんな大きな手でよくあんな器用に包み紙を開けれるものだ。
「はい」
ボーっと手を見ていた私は松川の声に反応し顔をあげると、そこにはポッキーを咥えている松川がいた。クイクイと顎を動かして、私を急かす。
「えっ!?ちゃんとちょうだいよ」
私が松川の持っているポッキーの袋に手を伸ばすと、松川はその袋を私から遠ざけた。
私がムッとして松川を睨みつけると、にやりと怪しい笑顔を見せた。そして、私の後頭部に掌を当てて、ぐっと顔を近づけられる。
「ちょっ!待って!!ダメダメダメ!!」
肩を押し返す力なんて全然通用しなくて、どんどん松川の顔が近づいて来る。
一度、目が合うと全然逸らすことが出来なくて、今にも松川に吸い込まれてしまいそうになる。
「・・・ふっ」
松川の笑い声で私はハッとして、勢いよく目を逸らした。
「これのどこがS?」
そう言って、私を解放し、松川はポリポリと音を立てながらポッキーを自分の口の中に押しやっていた。すごく悔しいのに、なんで私はドキドキしているんだろう。