第68章 【松川 一静】俺の彼女はドS
「ねぇ・・」
「なに?」
「・・・なんでもない」
「そう」
強引に教室から連れて行かれて、今現在校門を出る所まで来ていた。
さっきまで掴まれていた腕はもう解放されている。嫌であれば戻ればよいのだが、なんとなくそういう雰囲気じゃないので、そのまま松川について行った。
“・・・別に俺はいいけど。佐藤と付き合うの”
さっきの言葉を思い出す。
何?松川は私の事が好きなの?
私は隣にいる彼の顔をこっそり覗き込んだ。
太目のたれ眉毛。切れ長の目。癖のある黒髪。
改めて見るとなぜか目が離せなくなる。
今まで及川達といるせいか全然目立っていなかったけど、独特のセクシーさ、高校生らしからぬ色気がある。
「・・・なに?」
私の視線に気づいたのか、松川が不思議そうにそう言った。
「なんで、松川は私がMだと思うの?そんなのこと初めて言われたよ」
なんだ、そんなこと。と松川は再び前を向いて歩き始めた。
この人には私はどんな風に映っているのか。もしかしたら、今まで誰にも気づかれなかった、自分の本性を見破られたのか。だとしたら、松川はそれだけ私の事を見ていたということなのか。恥ずかしいような嬉しいような…そんな複雑な気持ちになった。
松川は私の事が好きなの?
でも、二人きりなのに手も繋いでこないし、もちろん告白だってしてこない。ただ無言で歩いているだけ。背の高い彼の歩幅に合せて歩くと、ちょっとだけ早足になる。
トンッとお互いの手の甲が触れた。
「ごっ、ごめん」
「あぁ」
・・・あれ?
ここで手を繋ぐ…的な流れかと思ったのに全然そんな様子が見えない。
「ちょっとコンビニ寄っていい?」
それどころか、私の返答を聞く前に、目の前のコンビニに入って行った。
「何考えてんの、あいつ」