第68章 【松川 一静】俺の彼女はドS
「えっ!?ちょっ!!ひろかちゃん!?じょ、冗談だよ!?」
じりじり距離を縮めると、及川の顔がどんどん赤くなっていって、ポッキーの先が及川の口に当たるか当たらないかの所で、彼はぎゅっと目をつぶった。
私は人差し指を口に当てて、周りに静かにするようにと無言で忠告する。
自分の口からポッキーを外してゆっくり及川の口にポッキーを指で押し込んでいく。
花巻が面白がって、目開けるなよ?男だろ!と煽っていた。
まだ?まだ?と及川が動揺し始めたころに、私は人差し指と中指と揃えて、そっと及川の唇に当てて、すぐに離れた。
ひゅーー!と周りが茶化す。もちろん、及川以外は唇に当たったのは私の口ではなく指だということは分かっている。
動揺する及川を見て、しばらくしてみんなが吹き出した。そして、そんな及川に周りが今のは指だったと説明をした。
「本当、ひろかはドSだよね~」
「ひろかちゃん、ひどい!鬼畜!!ドS!!」
周りがそう言って笑っていると、さっきまで一言も口を開いてなかった松川が急に声を発した。
「佐藤はどう見てもMだろ?・・ドM」
一気の教室から音が消えた。
唯一聞こえてくるのは、松川が今開けているチョコレートの包み紙の音だけ。
「えっと・・・松川、ひろかのどこがMなわけ?」
やっと友人の一人が声をかけた。
「・・・どこって。・・・全部?」
チョコの包み紙をきれいに畳んで机に置いた松川が私を見た。
「佐藤はどう考えてもM…」
「そっ、そういう松川はどうなの?S?M?」
私は咄嗟に話の矛先を松川に変えた。
「まっつんはS」
「Sだな」
「ドSだな」
3人が声をそろえて、松川がSだと言い切った。