第68章 【松川 一静】俺の彼女はドS
「初めてのデートの時に、手を繋ぎたいんだろうな~って気付いても、あえて手を繋がないで相手の反応見るのって楽しいよね?」
「出たっ!ひろかのドS発言っ!!」
私達は放課後、教室内でガールズトークに花を咲かせていた。
「でも、彼氏と別れたんでしょ?」
「…なんか違ったんだよね。好いてくれてるのは嬉しかったんだけど、それだけって感じ。私が彼の事が好き!って気持ちになれなかったんだよね」
「Sなひろかが彼を好き好き!って言ってるところなんて想像できないんだけど!」
はぁ。とため息をつく。今まで何人かとお付き合いはしてきた。けど、相手を好きで好きで仕方ないと思ったことは一度もなかった。
ガラガラ
「あれ~?みんな何してんの~?」
部活のジャージを身にまとった彼らが帰宅部の私たちがまだ教室にいることに驚いていた。
「あっ、及川じゃーん!どうしたの?」
「練習試合終わって帰ってきたところ!」
そう言うと男子バレー部がぞろぞろと教室に入ってきた。
「そっちこそ何してんだよ、こんな時間まで」
岩泉が不思議そうに私達を見てそう言った。
「ガールズトークだよ!」
友人がそう言うと、なんだよ、それ。と呆れたようにため息を吐いている岩泉。
「お菓子あるけど食べる?」
私がお菓子を差し出すと、一目散に花巻が食いついてきた。
結局、練習試合でお腹が空いていたのか私たちの囲んでいた机の周りに自分のイスを確保した大きい男達が4人加わった。
「ひろかちゃん、それ俺にもちょーだいっ!」
及川が私が口に咥えていたポッキーを指差してそう言った。
「これで最後だ、ごめん」
「じゃぁ、ポッキーゲームで!!」
イエーイ!と悪乗りを始めるこの男。
本当はここで、可愛く拒否すると思っているのだろう。
「いーよ。及川おいで?」
私はポッキーを咥えたまま、及川の顔に近づいていった。